生別の夢を見たその後

生別は悲しいもの、人目もはばからずエンエン泣く人だって少なくありません。
あの子、俺と別れるのが辛くて、見ろよ、泣いてるよ、こういう時って、辛いなぁ。
卒業式の時、こんな事を言って、一人で勝手に生別ロマンティストを演じようとしていた同級生がいました。
彼を遠目に見ながら泣いていたのは、彼が所属していた陸上部の後輩の女の子。
でも、私たちは知っていました、彼女が泣いていたのは、彼との生別が悲しかったからではありません。
彼女は、ただ単に花粉症の持ち主で、天気のとてもよかった私たちの卒業式の日の中庭は、彼女にとっては辛い場所だったのです。
そう、彼と生別が辛い訳じゃなくて、そこにいる事が辛かっただけ。
その証拠に、彼女は他の先輩に握手と写真撮影を求めていました。
私たち同級生はみんなわっていたので、バカじゃないかって言っていましたが、それでも、まだ彼女が自分との生別が辛くて涙を流していると思いたい友人でした。

生別に夢を抱ければ、それはそれでほんと素敵な事だろうとは思います。
ある意味、卒業式などで生別するという事は、それぞれが自分の夢に向かって旅立って行く事。
喜んでも悲しんではいけない訳だから、もし彼女が本当に彼の事が好きだったとしても、いえいえ、本当に好きだったら泣かないでしょう。
嫌いな先輩との生別を喜ぶ感動の涙かも知れないとか言って笑っていたクラスメイトもいましたけど…。
卒業式の別れに、男女の別れを紛れ込ます人も少なくはありません。
けれど、今思えば、高校生の頃からそこまで重たく生別という事を考えなくてもいいのではないかと。
これから先、もっともっと沢山の出会いと別れを繰り返していく訳ですから。
卒業式で愛しの人に生別のが辛くて泣くというのは、せめて大学ぐらいまでお預けにして欲しいものです。
ただ、大学生位になると、世の中の酸いや甘いが大分わってきて、そこまで純粋に人を愛せなくなってしまう可能性もなくはありません。
例え純粋に愛していたとしても、それとは別に現実を受け入れる能力というのが身に付いているから、卒業式で生別が辛くて泣けるのは、高校生の特権かも知れないですけど。

生別の瞬間は確かに辛いけど、卒業式の別れは、永遠の別れにならない事も大いにあります。
そういう事を考えると、むしろ卒業式の日に生別が辛くて泣くっていうの、逆に変ではないですか。
卒業シーズンになると、やたらめったら別れをテーマにしたブログ記事やサイトが増えて、人気を集めます。
みんな、憧れの先輩や先生との生別が辛いなんて語っています。
ただ、入学式シーズンになると、今度は出会いをテーマにしたブログやサイトが急増するのもまた事実。
結局はそんな卒業式での生別シーンに夢を抱いている人も、実は多いんじゃないかと思ったりもします。